アルシュレッタ/松本 卓也
 
さえ
まるで無意味なものに変えていく

アルシュレッタ
それは美しい笑顔のようで
醜い嫉妬にもよく似ている

幻覚に戸惑う夜を映し出すたび
思い出したくも無い愛を手紙から読み取る
存在さえもはや無縁となったというのに
それは彼方よりも遥かな記憶の中で
在りし日の恋の調べを思い出させるだけ

例えば米軍の居座る軍港から
かつて英雄が布武を唱えた場所へ
届かせようと願う声こそ相応しい

少なくとも忘れない間は見える
最悪でも思い続ける内は聞こえる
極めて限定された僕の耳と君の心に
募る後悔を指し示すアルシュレッタ
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