アルシュレッタ/松本 卓也
 
遠い遠い視線の先に
キラキラと煌いている
風の瞬きが視界を掠める

正体を掴み取ろうと
近づいて行くたびに
彼方へ彼方へ遠ざかっていく
形而上の産物を目にして
それをアルシュレッタと名づけた

定義付けを行ってみるけど
喩えるなら捨てられた子猫のように寂しく
喩えるなら月のように輝いて
口にする事すら恐れ多く感じた

宝石のように光っていて
紙幣のように薄汚く
夢のように実態がなくて
現実のように息苦しい

眺めていれば分かるけれど
空虚に奏でられるメロディが
幾重ものオーギュメントを繋げて
一つの賛美歌を作っているように

失われた想像の産物さえ
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