残毀 /月夜野
 
      
  あるいは下に
  折り重なり膨れ上がり
  臓物さえも晒して
  男でも女でもない
  ただの叫びの形をなして
  熱風に焼かれている


  苦痛に喘いだ命の極みは
  空しい祈りの余韻にも似て――


  鳥たちの通う空にないものが
  この地上にはあって
  獣たちの王国にあるものが
  この地上の王国には失われているのだった
  命の最も奥まった場所にしまわれた
  いたいけな蕾さえも犯し続ける
  罪とも知らず


  弔いの鐘が鳴り響く朝
  一人として贖う者なく
  ただ鉛の錘を両肩に背負い
  光の名前を唱えながら
  栄光と呼ばれる病に罹患した人群れは
  どこにも到達しえない行軍を続けるのだ
  世界が縫い閉じられる
  その日まで



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