キミがすきだから/AKiHiCo
僕が生まれてきた理由を
手探りで探そうとするけれど
腕を天井に伸ばしても何も掴めない
幸せはどこに在るというのだろう
横でキミが虚空を睨んでいる
見えない答えが欲しくて
ずっとキミと二人きり
四角く狭い部屋でカーテン閉めきって
雑音が交差して静けさが床に転がる
ここに言葉など必要ない
指先が触れ合うだけで
キミが僕の傍で呼吸をしてくれていれば
それでいいから
瞳に移る曲線だけの世界
そこに僕はちゃんと映っているの
そんなことは怖くて訊けない
いくら話しかけても
何も答えてくれない唇だけど
今日もキミの細い指先に触れる
いつの日か握り返してくれる
そう信じて
僕がキミが生まれてきた理由は
きっと生きてるうちには判らない
自分では判らない生命の灯火が
消えかけた一瞬に誰かの声が聞こえる
そんな感じの儚くあやふやな僕等
溜息を転がしてソファから立ち上がれば
現へ引き摺り戻される
ドアを静かに閉めてキミに心の中で言う
「 、」と
戻る 編 削 Point(3)