神君徳川いえやす公/構造
 
いえやす公
幕府をひらいてください

いにしえということばがすっかりと
きえさったあとで誰もが
赤いカーテンや黒いカーテンのむこうで
からごころのうたをうたっています

しかたないのでぼくたちは
石竹でつくられたさくらの顔料の
女の肌をみつめながら
たたきつけられた
きえいるくろがねのひびきが
急転下して流麗になる計算された
さけびのなかで
恋のうたをうたっています

それでもぼくたちは
ほんとうに日輪の子だったのです
おや孝行と学問にはげむ
りっぱなさむらい大将です

東照大権現
いえやす公よ来てください
やさしさとは天下泰平です
厭離穢土です。
[次のページ]
戻る   Point(6)