神君徳川いえやす公/構造
いえやす公
幕府をひらいてください
いにしえということばがすっかりと
きえさったあとで誰もが
赤いカーテンや黒いカーテンのむこうで
からごころのうたをうたっています
しかたないのでぼくたちは
石竹でつくられたさくらの顔料の
女の肌をみつめながら
たたきつけられた
きえいるくろがねのひびきが
急転下して流麗になる計算された
さけびのなかで
恋のうたをうたっています
それでもぼくたちは
ほんとうに日輪の子だったのです
おや孝行と学問にはげむ
りっぱなさむらい大将です
東照大権現
いえやす公よ来てください
やさしさとは天下泰平です
厭離穢土です。
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