無題(都市の末梢神経が、〜)/カワグチタケシ
 


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 23時35分。僕たちは街路に出る。友だちは35日の話をする。それが何月のことだか忘れてしまった。雨滴がひとつアスファルトに落ちる。眠りはじめた街に、友だちの笑い声が教会の鐘の音のように美しく響く。何度も鳴らされる教会の祝福の鐘のように、友だちの笑い声が何度も美しく響く。

 地下鉄の駅で友だちと別れ、僕は歩いて家に帰る。そこには眠る人がいる。眠りについた都市の末梢神経に、眠らない波がひたひたと打ち寄せている。

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