安らかな夢をください/松本 卓也
脳をまさぐると
まるでさっきまで
そこに在ったかのように
断片が輝きを放っていた
思い起こす
笑顔のような表情
涙声と数々の溜息
隙間を広げた綻びから
記憶が流れ去っていく
まるで目の前を通り過ぎた
過去と幻想を描写するように
少し欠けた月を
欠片で埋めてみようか
この記憶に宿る
拭えない傷を集めて
輝きが瞬くたびに
流した涙の意味を
少しずつ失っていく
去り行く日々に跨って
出来る限り遠くへ行こう
足元に残した心は
今はもう重過ぎて
耐えられなくなる前に
次の思いを見つければ
もう少しだけ安らかな
夢を見る事ができるだろうか
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