例文/三条麗菜
あなたへ手紙を書こうとする時
暗闇を映した窓に
例文が訪れます
「あなたとは
もう何も無い」
私は絶対に
そんなことを書きたくはないのです
ありえないほど光に満ちた
未来を思い浮かべ
あなたへ
想う限りのことを綴ろうとします
あなたと私が共に生きて
共に幸せである未来のことを
でも例文は
黒い大きな翼を持っていて
窓の向こうを飛び回ります
「あなたとは
もう何も無い」
例文は私の心ではありません
例文はただの
見本としての文章です
それに従う必要は無いのです
でも例文は
鋭いくちばしで窓を突き破り
部屋の中に侵入し
翼の
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