怪し、夢と思ふ/なかがわひろか
 
一寸の間に見た
夢のお話

赤いメダカが
五臓六腑を泳ぐ

ストレエトな
羊の巻き毛に

乾いたペンキが
真っ白に染まる

嗚呼厭ァ
声をかける人は
皆明るい影を持つ

踏めば痛ひ痛ひと言ふ
嘘つきと言ふ
冗談はお止しよ

真に受けず聞いておくれよ
即ち其れは前戯の妖かし
をかし趣所以曙
いと可笑しいなあな楽しや

心を喰らって腹を空かせよ
お前と言ふな
気易く呼ぶな

一寸の夢のお話
ゆめゆめお気になさらぬ様

(「怪し、夢と思ふ」)

[グループ]
戻る   Point(2)