先住民の故郷/小房 嘉納子
 
のだった

しかし
果たしてそれはそうだったのか、と
先住民の娘は考える

綿々と受け継がれるその生き方こそが
当たり前の美だったのではないか
親のそばで親に守られいつしか親を守る
若くに子を作り育て働き
地を守り地に生きる

恐らくそれが
正しい先住民の生き方だった


故郷を恥じた娘は年を取り
それでも故郷に馴染めないままさらに年を取るでしょう
かつて先住民だったその恥の土地に
どの面さげて戻れるだろうか
未だ己が何者であるかなど
地に足着かぬ彼女らには到底わからぬことで
それでも
間違っていなかったという確信が彼女らにはありました

さらに年を取った親や微細な血の関係の諸々
手に取って味見し喰らう日が必ずやって来る
消化し踏みしめて受け継ぐ日から
逃れられるものではない
今思えば
懐かしくないこともない


西を向くと
遠くから故郷の声が聞こえてきます
その中に
新たな先住民たちの根付く音が
じらじらと低く混じり続けています














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