冬の庭/まほし
 

みんなみんな
大きな空のなかに
ある。


  あのね、
  学校のうら庭で
  上ばきと
  チョークでコンクリートに
  「シネ」って
  書かれているのを見つけたとき・・・
  ほんとうに、いなくなりたかったのよ。


――――――もうこれいじょう
               

       どこにも、いけない。




すっかり夜になったころ
わたしはうなだれて
家へもどってきた。
お母さんは
泣きはらした目をして
それでも何もなかったように
あたたかいミルクをいれてくれた。


うんと冷えたゆび先で
マグカップにふれると
じんとしびれて
きもちいい。


「今はまだ小さいから
どこにもいけないかもしれないけど」


お母さんは、
わたしの目をみて
つぶやいた。


「大きくなったら、
どこにでもいけるから」


目をつむったら、
しゅんと枯れていたはずの花が
三日月みたいに
白く
光りはじめた。






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