ファニチャア海岸/カンチェルスキス
 






 古くて黒ずんだ家具を
 背負って
 わたしは海まで歩いた
 捨てようと思ったのだ
 生まれたときからずっと背負ってきたものだが
 今日であの海が終わるかもしれないとふと思い
 やってきたのだ



 歩いて15分の古い家具専用海岸だった
 遠浅の海で砂浜がある
 ヨットの船着場の向こうで
 食品工場の煙がたちのぼっている
 古い家具たちが波の穏やかな海に
 斜めになって浮かんでいる
 まるで溺れかけの大都市のようだ
 広い砂浜で赤のスポーツカイトを操ったり
 大きな真っ白の犬を気ままに走らせて微笑んでる人たちは
 古い家具を捨て去った
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