ただ、それだけの出来事/ベンジャミン
 
その子はいきなり泣き出した
そのとき僕の記憶もまた
それと似た光景を呼びおこしていた

それは数年前の出来事
そのときの僕はとても追い詰められていて
そのときたまたまつけていたTVの中で
それは確かアニメの一場面だった

「お前は今、泣いていいんだ」

そんなセリフだったと思う
それを聞いた瞬間、僕は泣き出していた
それまで出したこともないような声で
それまでの辛さを吹き飛ばすほどに

そんな出来事を思い返していた

そのときの自分と同じに思えた

「泣いていいよ」と、その子に言った

その子はそれまで以上にはげしく泣いた
その子の頭を撫でながら

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