無月/松本 卓也
 
果たされない約束など
交わさなければ良かった

費やした言葉が無為に過ぎ去る
遠くで手を振っている影が
単なる錯覚だと気づいた時
壊れた傘の骨が頬を突いてきた

見向きもされない視線に
負わされた切り傷から
流れ出る透明な血液は
消して止まる事はない

だから体に傷を負う程度
たいした事じゃないさ

紛れる痛みと星の無い空が
数少ない心の拠りどころ
嘆きに意味を与えた言葉はもう消えた
月さえも今の僕を照らさない

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