オリオン。/有邑空玖
 

寒いのは嫌いだって、
冬になると毎日、恨めしそうに空を見上げる。
曇りがちな12月。
街中にはクリスマスの音楽が溢れていて、
何がそんなに楽しいの?
よく判らない。


冬の陽は暮れるのが早い。
少し遊んで、空を見るともう翳っている。
暗くなる前に帰らなきゃ。
ひとりで夜空を見てると、
もう二度と、帰れなくなりそうだから。


東の空に張り付いているオリオン。
気がつけばいつも探している。
空の果てに居る君が、
名前を呼んでくれてるんだね。
いつも聞こえないふりをしているけれど、
ほんとはちゃんと判っているよ。
かじかんだてのひらをポケットに入れて、

ベテルギウス、リゲル、ベラトリクス。

ほら、まだちゃんと憶えてる。


君の声が聞こえる。

オリオン

冬の星はいつも優しい。

オリオン

君の声が聞こえる。


聞こえる。



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