髪にもぐる指/________
 





朝になりかけた夜、
わたしは
わたしとあなた以外のすべての存在に(当然そのとき窓の外にいた月や引力にも)
気がつかないのだった





あなたの吐いた
荒れたためいきが
ひとつ
そしてわたしの髪をなびかす
ふたつ
そしてわたしの汗を蒸発さす
気がつかないうちに
視界が狭くなって
ちょうどあなた一人分しか目に映せなくなる
あなたにもわたしにも
五感の他に
相手を感知するやり方が
もっともっとあればいいのに
肌、唇、舌の接触なんて
足りない、もどかしい、役立たず
だってどこまで行っても
間には境界線が見えるよ
わたしとあなたは
二つの個体でしかない
自意識と恥が
逃げ出したとき
丁度
あなたが
わたしの頬をかじったとき
全部、食べちゃって欲しいなんて
言わなかったけど
出したら最後には抜くくせに
触れたら最後には離れるくせに





わたしはもうすぐ空や朝や引力に気付くところだ
引力に従ってあなたにキスを落とすところだ






戻る   Point(5)