落涙/霜天
 
ないままで。落涙。落日。過ぎ去っていく日々の柔らかさを、全ては覚えてしまっているから。この手はどこへ返せるのだろう。そこに立たなければ分からない世界で。


落涙。
涙はどこへ帰れるのだろう。
涙はどこへ返せるのだろう。
全てが帰る夢を見て、ひとりを抱いて眠る日は。
遠い、遠いあの頃のまま。
風の歌う空を聞いた。


やがて忘れる物語のような、美しさをその道に添える。淡い憧れを乗せて放たれる矢の、狙いを定める君の手の、震え。昨日に縋る足場もない。言葉はどこへ帰れるのだろう。触れたがらない温もりの、海へ続くカーブに沿って。涙落ち、降る夢は、今もまだ、続く。
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