タイヤの塔/チアーヌ
そよ風に吹かれながら
野原を歩いて行くと
車の墓場があった。
どこからか
一台
また一台と
車がやってきて
力尽きたように
そこで蹲るのだった。
わたしはそこまで歩いて行き
タイヤを外して回り
それをひとつずつ
積み重ね始めた。
タイヤが天国まで届くには
かなり時間がかかりそうだったけれど
わたしは
ゆっくりゆっくり
その作業を続けた。
たぶん神様なんていないから
天国も無いと思うけど
野原にはタイヤの塔が立ち始めた。
ひとり、またひとりと
わたしの周りに
人が増え始めた。
みんな汗を流してタイヤを外し
野原の真ん中に
タイヤの塔を作る。
いつかタイヤの塔は
天まで届くかもしれない。
たぶん神様なんていないから
怒られることも
ないだろう。
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