鏡/なかがわひろか
鏡の中で嘲笑う者は
いつしか年を取っていた
絶世の美に酔いしれながら
いつしか年を取っていた
鏡の中で嘲笑う者は
いつまでも嘲笑っていた
なんて醜い顔かしら
排水溝の様に深くめり込んだ皺
瞼なんてろくに開けやしないじゃないの
なんて汚い笑い顔なんでしょう
鏡の中で嘲笑う者は
段々瞳を閉じていく
ほらご覧なさい
もう瞼は重力に逆らえないの
年を取るのは嫌ね
なんて汚らしいのかしら
そう言って
鏡の中で嘲笑う者は
必死になって
口を動かす
(「鏡」)
戻る 編 削 Point(2)