鏡/なかがわひろか
 
鏡の中で嘲笑う者は
いつしか年を取っていた

絶世の美に酔いしれながら
いつしか年を取っていた

鏡の中で嘲笑う者は
いつまでも嘲笑っていた

なんて醜い顔かしら
排水溝の様に深くめり込んだ皺
瞼なんてろくに開けやしないじゃないの
なんて汚い笑い顔なんでしょう

鏡の中で嘲笑う者は
段々瞳を閉じていく

ほらご覧なさい
もう瞼は重力に逆らえないの
年を取るのは嫌ね
なんて汚らしいのかしら

そう言って
鏡の中で嘲笑う者は
必死になって
口を動かす

(「鏡」)

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