はじめ/________
 





あ、と思いついたように
君の名をよんだ
アルバムをめくるような心地よい痛み
かつての日常がじろりと一瞥する

表情のない唇からそれは流れ出て
部屋のどこかに隠れて、そして届くべき相手を探しさ迷い、
明日にでも絶滅するだろう
目の前の壁の白を映した、色のないためいき
キスを待ちわびることさえも忘れてしまった唇が
わたしに開いたもう一つの穴となったまま
時計がすすむ
夜が死んでいく
おやすみを飲み込んで
君の名をよぶ







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