寓話#5/Utakata
けが少しずつ色とりどりに染まっていく。
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友人が出て行った後の扉をしばらくのあいだ見つめている。蛋白質が燃えるような臭いと共に鈍い金属音が鳴り響いて、窓を開けて外をのぞくとちょうど皆既日食が始まるところだった。少しずつ光を失っていく空を、西の空からやって来た無数の蝶たちが埋めていく。蛋白質の臭いに我慢ができなくなった所で窓を閉め、閉じたままの扉にもう一度目をやった。去り際の友人の台詞を思い出して、本当は世界はしばらく前に既に終わっていたのではないかと考える。しばらく前、ちょうど、そう、三日とか、あるいは一週間前くらいに。
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