夜想/松本 卓也
 
雲が空を覆う
星はかけらすら見せず
唸る風が耳元で囁いている

心を空虚が支配する
何も無いように見えるけど
目を凝らしてみれば
底にある笑顔が見える

忘れていたはずの
覚えていたはずの
時を経ても変わらない
硬直した微笑が

かつて全ての希望を抱いて
安らぎを与えてくれていた
何時の日か片隅に刻まれた印が
僕を過去に押し留めている

涙にぼやけながら
記憶に霞みながら
時折鮮明となるその姿に
何度となく打ちのめされていく

辿っても見えない痕跡
一度は断ち切った糸を
無意識で引っ張っていく内に

結局は昔と同じ顔で
草臥れて泣いている自
[次のページ]
戻る   Point(1)