夜想/松本 卓也
雲が空を覆う
星はかけらすら見せず
唸る風が耳元で囁いている
心を空虚が支配する
何も無いように見えるけど
目を凝らしてみれば
底にある笑顔が見える
忘れていたはずの
覚えていたはずの
時を経ても変わらない
硬直した微笑が
かつて全ての希望を抱いて
安らぎを与えてくれていた
何時の日か片隅に刻まれた印が
僕を過去に押し留めている
涙にぼやけながら
記憶に霞みながら
時折鮮明となるその姿に
何度となく打ちのめされていく
辿っても見えない痕跡
一度は断ち切った糸を
無意識で引っ張っていく内に
結局は昔と同じ顔で
草臥れて泣いている自
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