目覚まし時計を止めたまま/たりぽん(大理 奔)
私が眠っている 界の隙間で
空がどんなあくびをしているか
そんなことが知りたくて
目を覚ますと、忘れてしまう
後頭部に焼き付くような
落日のあの色を
惰眠のみやげにしようと
まぶたに閉じこめると、忘れて
胸を衝いた笑顔を切り取り
眠りの中で私だけのものに
、そうしようと考えた途端に
夢ではなく失ってしまう
忘れること
失うこと
いまそこに無いということが
私が眠っている世 の狭間で
仕草の一つ一つを忘れはしないのに
手を伸ばした姿勢のまま
失ってしまう
小さな棘のささやかな痛みで
今日もまた目覚めてしまう
私の眠りの中で胸を付いた笑顔も
手を伸ばした姿勢のまま
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