湯張り/________
言いながら
鈴カステラを食べたんです
歯をがちがち鳴らしながら笑って
がちがちと笑って
許されていると思い込んで凍えていました
落ちたマスカラの黒を指差され笑われました
ウォータープルーフなのに
あれは友達ごっこですか
じゃあ
わたしが今気付かないふりをしている
日々の一喜一憂と
冷えた指を握る暖かな手のひらと
交じる音楽と
触れた髪と
こぼれる笑みと
無表情の冷徹と
掻き毟る母性と
月並みな恋しさと
目の眩む吐息は
恋愛ごっこでしょうか
大正解
ああ
まもなくお湯が沸きます
手足の指先から侵攻してもう感情までも凍てついているので
お湯に触れたら
不慣れなぬくもりには痺れを感じるのでしょうね
じき
慣れたら
暖かさを感じないようになってしまうのでしょうね
ぬるくぬるくなるのにそこから出たらもっと寒いんだろうと分かっているから
こんなにお付き合いどうもありがとうございました
それではお湯を頂いてきますね
ではまた
今度はきっとあなたのおはなし聞かせてくださいね
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