/実夜
 
いつも 無 をこころがける

そうすれば 何 も感じずに

せかいは すすんでいくと

思っていた

じわじわと 心が麻痺していく

のを

じっ っと静かに感じていた

どすぐろい感情たちも

抑えられて とても

おだやかに 思えた

けれど それは危険なことだと

誰かが 教えてくれた

妬みも 嫉みも 怨みも

感じないなんて 人じゃないよ と

でも ながいことそうして

過してきたから 心が鈍くて

したいことも 浮ばなかった

ほしいものも 浮ばなかった

そうして やっとすこし

危険を感じられた

これに慣れるには 時間が

かかってしまいそう

人のまえで わがままとか

欲望とか はっきりと

いった試しがないから

怖くて



こわくて

きらわれるのでは ないかしら



こわくて

やっぱり 何もいえなくて

笑ってしまった

だいじょうぶって

いってしまった
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