そうだったのか/山崎 風雅
霧のかかった幻のなかで
俺は一人佇んで
通り過ぎ行く人や車や季節を
ぼんやり眺めている
救急車が夜の街を支配する
隣りの部屋では
まだ若い大学生が
寝息を立ててるのが聞こえる
どこに向うのか
先には天竺が待っているのか
先には閻魔様がまっているのか
頭の回転の弱い俺は考えるのを止めにして
ひざに身をまかせる愛猫を撫でてやる
明日は冷えそうだ
罪のない冬に向って加速するのだ
あまりにも膨らませ過ぎたサークルで
俺はしきりに目が回っている
光りの射さない日々に
覆い被さる軋轢に
揺るぎない心を強くしよう
俺には聞こえるんだ
みんなの笑い声が
簡単さ
難しく考えるな
お前の惱は被爆してる
俺が吹き飛ばしてやる
ふんっ
ふんっ
ふんっ
金に困っていたのか?
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