世界と少女/なかがわひろか
あの娘は世界を見つけた
そこには世界が広がっていた
周りをどれだけ見渡せど
世界だけが広がっていた
縮み上がるような冷気の中で
小さな小さなこの場所から
世界を知ってしまったあの娘は
駆けていった
風も大地も空もない
ただそこには世界が広がっていた
彼女は少しだけ背伸びをして
世界を体いっぱいに吸い込んだ
世界は彼女の中で膨らんだ
世界を見つけた興奮が止まらない
彼女は精一杯
世界を吸い込もうとした
翌日彼女は死んじまった
誰にも気づかれずに
風も大地も空もない
ただただどこまでも広がる
世界の中で
ただ一人
死んでいった
(「世界と少女」)
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