サーモ/ねなぎ
日頃からの賜物なのか
目を開けると世界が歪んでいた
待合室は込み合い
エチルの香りが
そこはかとなく冷えて
空気が比重を増し
密度を濃くしていく
吐き気に思わず咳き込み
波のある鈍痛に
甲高い呼び声が響く
浮かされたような
意識が振動している
変色の窓からの
切り取られた色が
壁を照らす
焦げるように喉が
掠れた音を出す
椅子に座って動けず
じっとりとした汗に
誘電されるように痺れる
小さな窓からでは
赤くなれど伝わらず
目盛りを確かめようと
水銀の筋を見るのだが
雑音に邪魔されて
抵抗値も解らない
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