オレンジライン/相馬四弦
 
午前四時のバックシート

湾岸線を下ってゆく

両親に会話はなくて

タイヤが高架の継ぎ目を踏むたびに

小銭入れがカタカタと音をたてる

曇天の下に都市高速の枝葉が

はるか闇色の地上を煌きながら這ってゆく

どうしてあの美しいナトリウム・オレンジは

こんなにも未来を傷つけるのだろう

袖を伸ばして車窓の水滴を拭った

その小さな視界から

夜明けを待つ海の寝返りが見える



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