観覧車/椎名乃逢
「…が足りません」
そう言って無愛想な係員さんは私と彼を押しのけた
何が足りない?よく、聞こえなかった
となりのジェットコースターみたいに、
身長が決まった高さまでないと乗れないの?
そんな観覧車聞いたことないよ
後ろの二人連れの女の子の方は私より背が低かったのに
係員さんは咎めもせずにゴンドラに二人を乗せた
うれしそうにほころばせた顔がだんだんと見えなくなって
無愛想な係員は私たちを無視して操縦板の前に戻った
何が、足りないのかなあ
話しかけたい言葉がなぜか声にならなくて
話しかけたい私に気づかずに彼は、
ゆっくりと回るゴンドラを黙って見ていた
何が、
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