埋葬の前夜に/白雨
 

 暗闇のなかを片輪の百足虫が走る。
 背中は凍りつくように冷めたい。
 十時が一番うつくしい、君、
 髪はながいほうがよい、
 鏡は嘘しかつきようがない、
 だって彼には腹というものがないのだから。
 いずれ廃れて滅びるだろう
 その廊下を、
 百匹の百足虫が君のことを想って走る。


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