王様/吉田ぐんじょう
 
のように
堂々として見えたが
少し背骨が曲がっている所為か
何だかしおたれて見えた
王様の国はどこなんですか
と聞くと
余は国を持たぬよ
余の居るところが国じゃ
そして世界の中心じゃ
と言って笑った

浜辺の風はそよそよとして
王様の王冠はきらきらと光る
帰りませんか
と聞いたところ
余はここにおる
と言うので
王様を残して先に帰った
それ以後
王様には逢っていない
波にさらわれたのかも知れない
それとも
違う家来を見つけたのかも知れない
海の近くを通るたび
余は国を持たぬ
と云う王様の声が聞こえる

正月に初詣に行ったら
自分のことと
王様の幸せを
八対二くらいで
祈ろうと思った
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