一羽のカモメ/杉菜 晃
 
海は視界から消え
潮騒は失せる
カモメは内陸へ飛ぶ
線路の導くままに
線路を離れては生きられないかのように
枕木の上に翼の影を落として
飛んでいく


あのカモメはどこへ行くのだろう
線路の終着先は大都市だ


海を離れていく一羽のカモメは
誰もいない海に
ひとりでやって来る人のように
寂しい


都市で鴉にまじって生きるのか
それは夢の夢にすぎないくらいは
充分知っていよう
では線路上を飛びながら
海につぐ 水の郷を探すのだろうか
沼とか 湖とか
そこに浮いて白鳥のように生きるのか
いずれにしても 至難だ


海を離れていくカモメは
哀しい
誰もいない海にやってくる人のようだ


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