誰かの呼ぶ声/快晴
 
朝は失望の青い匂い
小さなテーブルの上には
ビールの空き缶が並び
頭に鈍痛を抱えたまま
ネクタイを締めて鏡に向かう

寒々しい街路樹を駅へと辿る
前を歩くOLの後姿が
いつかのあなたに似ている気がして
それに気を取られた私は
青信号を逃してしまう

遠くの空には白けた満月が
太陽の光に照らされて
所在なさげに浮かんでいる
誰もそれに価値を見出さず
黙って足元を見つめている

キリギリスの私は
持ち合わせの無い愛を探して
コートのポケットに手を入れたまま
誰かの呼ぶ声に応えるように
背中ばかりを気にして歩く

戻る   Point(4)