待ち人/肉食のすずめ
 
夕暮れ時に網戸が一人
黒く文様を描いている
私もこの時間になると一人
壁に掛けてある濃紺色のジャンパーの
奥へ
暗がりへ
入っていく

ジャンパーの先には夜の海がある

彼女はいつも一人
砂浜に座っている
人を待っているそうだ

今夜は暑いですね
ええ

水温が上がっているから
振り返らず彼女は答える
水平線の向こうから
こちらまでずっと
空は黒く
とどまっているのに
海面のところどころから
ときどき
白く沸き立つ音が
聞こえてくる

陸地から熱が奪われているの
どうして
さあ
もう
ここにはもう
人が
いないからじゃあないかしら
[次のページ]
戻る   Point(4)