漆黒の髪を愛する/銀猫
雨の糸の隙間に
夜は満ちて
ストーブの熱が
そこだけ幸福とでも言いたげに
ほんのり春を創っている
きみと並んで傘をたためば
二人の水滴は
余分な約束事のように散らばって
冷えた手のひらさえもが
春を創るように
しゃらん、と一瞬
声を上げる
雨の舗道を掻き分けた靴は
まだしばらく乾かないだろう
傘は二本並んで
しっとりと時間を分け合っている
日増しに遠のいてゆく古いかなしみを
思い出とも呼べず
今もあなたと口づけたなら
わたしはきっと泣くのだろうに
恋には出来すぎた偶然や背伸びが
似合っている
雨の糸の隙間で
髪は揺れて
ひそやかに濡れ
漆黒
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