ショッキングピンクの図書館/なかがわひろか
 
ショッキングピンクに彩られた図書館で
同じ色の目をした受付嬢がこう言った

あなたの瞳は黒いわね
あなたの服も黒いわね
きっとあなたの子供も黒いのね

ショッキングピンクの壁や床や本の背は
あなたの瞳に入ると
真っ黒にされてしまう

大好きだった本を探してみたけれど
すべてが同じ色に支配され
あの頃の感覚を思い出せない

カードを持っているなら貸し出すわ
だけど返さなくて結構よ

どうせあなたのことだから
そこに映る文字たちも
真っ黒に変えてしまうのだから

手に取った
大好きな本は
重さは何も変わらない

きっと読むことはないけれど
カードを持っていたから
借りて帰る

もう二度と訪れることのできない
ショッキングピンクの図書館を後にして

(「ショッキングピンクの図書館」)
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