知らないお兄さん。/もののあはれ
子供の頃に叱られた
知らないお兄さんの顔がまだ消えない
蟻を踏んずけて殺してたら
知らないお兄さんに
ひどく叱られた
今度やってるところをみたら
今度はお前に同じことをしてやる
ものすごい恐怖だった
何か悪いことをすると
あのお兄さんが追いかけて来て
ひどいことをされるという恐怖
今で言うところのトラウマか
もう二十年以上も経つが忘れない
学校で習ったことはあまり覚えていないが
あのお兄さんの顔は強く脳裏から離れない
きっかけは恐怖であったのかもしれないが
命を粗末にしてはならないと
決定的に僕の心に焼き付けたのは
教科書でも学校の先生でもテレビでも
或いは親でもなく
知らないお兄さんだった
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