永遠のむこうにある空  デッサン/前田ふむふむ
 
風に鳥は、声を失うが、
あすには、華やいだ美貌にまみれた街の、豊満な肉体に
浸るのだ。

川面が、両肩を乗り越えてゆく錯覚を、
いくども、病院の白い壁が、試みているが、
わたしは、川面のみずの悲しみを、
今日だけは、小さな眼差しで包みこもう。

白い病院が、おもむろに夜の暗闇に沈み、
うすいひかりを携えて、
無垢な子供たちの廃墟の足跡が、透明な螺旋をなして、
空に駆けあがる。
轟音をあげる沈黙の垣間を、
川は、遅れながら、病院の凍える門に流れてゆく。
黒く染まった冬を、永遠に見つめて。

わたしは、川面を両肩の内側に抱いて歩く。
           
足が萎え、涙が枯れるまで。



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