ベッドタウン/佐野みお
 
果があるのだろうか。
  終電車が線路を揺らす音が
  遠くかすかに聞こえる。

 昼間外出することを
 少女の両親は快く思わない。
 自分が悪かったのだ
 そう少女は納得している。
 今では隣近所の住人たちも
 少女の存在を忘れかけている。

  始発が線路を揺らすまでの時間を
  老人は計算する。
  あとほんの四時間
  この重たい夜はまた
  なんと短いのだろうか。
  なんとあわただしく
  地球は回るのだろう。

二十万の住民がベッドで
眠ったり眠れなかったりしている。
ベッドは一つの範疇である。
自分の眠るべきベッドが失われたことを
まだ知らない者が
タクシーでこの街に帰ってくる。
それにしても
神々の物語に由来するにしては
星座はやや歪んでいるとはいえないだろうか。

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