恋風味/暗闇れもん
 
俺の周りにはいつも飴屋がいた
あまい飴
にがい飴
からい飴
すっぱい飴
そいつはいつも
感情なんて面倒なものだと言わんばかりに無表情な顔で
飴を入れた桶を二つ肩にしょい
金魚売りの要領で飴を売る
あまい飴を頼むと
くすんだ色の桶から鮮やかな赤の飴があらわれ
口に含むとなぜか
からい飴にしておけばよかったと後悔が襲う
あまい飴が嫌な訳じゃない
たぶん

からい飴を興味本位で食べてみた
案の定、舌が俺を捨てるくらいの代物だった
こんな物、頼むやつなんているのかって
興味本位で聞いてみたら
指をさされた

相変わらず飴屋には表情がない
もしかしたら飴に感情を吸い取られたのかもしれない
にがい飴を食った俺の頬を何かが伝う
分かってた
だから
俺のじゃねえよ
たぶん


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