祝、人間/山崎 風雅
 
 俺は一人だった
 親兄弟は俺を見捨て
 友達は卑屈になった俺を疎い
 甲斐性もない俺に付いてくる女はいなかった

 一人繁華街をうろつき
 ぽん引き相手にケンカをしかけ
 街を横切る河原で
 同じように孤独に染まった月を見上げて
 缶ビールを飲みながら煙草を吹かしていた
 涙は砂漠のように枯れていた

 すがるように
 祈るように
 一人で歩いた
 
 愛される場所を探して
 自分の居場所を探して
 ひたすら一人で歩いた

 終電に乗り遅れ
 街灯さえ灯らない土手沿いの道を
 一人慰めの歌を口づさんで
 歩いた
 
 青い月を見て
 歩いた

[次のページ]
戻る   Point(11)