祝、人間/山崎 風雅
俺は一人だった
親兄弟は俺を見捨て
友達は卑屈になった俺を疎い
甲斐性もない俺に付いてくる女はいなかった
一人繁華街をうろつき
ぽん引き相手にケンカをしかけ
街を横切る河原で
同じように孤独に染まった月を見上げて
缶ビールを飲みながら煙草を吹かしていた
涙は砂漠のように枯れていた
すがるように
祈るように
一人で歩いた
愛される場所を探して
自分の居場所を探して
ひたすら一人で歩いた
終電に乗り遅れ
街灯さえ灯らない土手沿いの道を
一人慰めの歌を口づさんで
歩いた
青い月を見て
歩いた
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