peche/蒼依
帰り道を黙々と歩いていると
吸わないはずのタバコの煙が恋しくなって
足をはやめる
あんなに嫌いだったのに
あなたに残った残り香は
どうしてかこんなにも心地いい
誰かに吐きだして
寄りかかってしまえば楽なのは
解っているしそうしたい
だけどしっくりくる相手が
あなた以外の誰にもいない気がして
虚しい気持ちが広がるだけ
誰かがうちに忘れていった
可愛いピンクのタバコ
見よう見まねで火をつけて
煙と一緒に全部出てっちゃえばいい
(何よ、こんなもん。ちっともおいしくないじゃん)
だけど髪についた大嫌いな香りだけが
あたしの心を落ち着かせる
ベランダに落ちた灰の光だけが
妙に鮮明でリアルな夜
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