彼岸花/有邑空玖
赤い花、咲いた。
燃え盛る炎のように
大切なものを消し去る、理不尽なその花。
思い出すのは真夜中
暗い海を見つめていた夏の終わり
灯台みたいに
僕たちを導く光なんて何処にもなかった
手を繋いで
東へ向かって歩いて行く
「光がないなら、自分の足で探しに行けば良いさ」
君の言葉はいつだって
圧倒的に正しいってこと
今でも良く憶えている
明けない夜なんてない
強く想うと壊れてしまいそうだ
生きている意味なんて何処にあるの?
「傷つかないこころ」
壊れてしまいそうだ
朝は、何処だ?
見失ってから
大切だったと気づく
いつも
いつもだよ
赤い花、揺れる。
君はもう永遠の真ん中で
世界の終わりを笑って見ている
僕はまだ繰り返す日々の途中
朝を探して彷徨っている
赤い花、咲いた。
燃え盛る炎のように
僕の記憶を照らし出す、鮮やかな彼岸花。
(初出:「ALL WORDS COA OSAKA SPEIAL」にて朗読)
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