アドニスの小鳩/
三条麗菜
まですよ
そこでは声も出せません
世界が終わるその日まで
水晶のケースの中で
じっとしていないと
いけないのです
大切にしていた小鳩を
私がそっと取り上げて
早く大きくなりなさいと
あなたの手を取り囁きかける
私は今日から小鳩です
私は今日から羽毛をまとい
あなたの膝に横たわり
あなたの腕に抱かれます
アドニス
アドニス
その名を小さく呟けば
私の心に
赤い
赤い花が咲き
その花びらは
体中からこぼれてゆく
体中からこぼれてゆく
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