駅/ささやま ひろ
僕は明日引越しをする
仕事上の都合で
電車にて
片道わずか一時間半の距離
大げさなもんじゃない
なのに
こんなにも心が寂しいのはなぜだろう
それはきっと
あの少年に会えなくなるから
朝のホーム
小学校高学年と思われるその少年は
車椅子で電車に乗り込もうとしていた
駅員が二人
彼の乗車を助けている
凛とした振る舞い
あどけなさの残る笑顔
少しの卑屈さも感じさせず
傲慢さも見られない姿
ありがとう
駅員へのお礼の言葉と
微かな笑顔を残して電車の中へ
それぞれの一日が始まる
彼を見かけるよ
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