心の迷路は成長している/ぽえむ君
 
雨の中を
迷子の少年が傘を差さずに立っていた
誰かがそばにあったタオルを
子どもに渡してあげた

 人のタオルを勝手に使わないで!

持ち主の声がその場に響く
頭を拭き終えていない少年は
黙ったまま
だらりとタオルを下げた

少年の母親が
やっとのことで少年を見つけ出し
タオルを見ると

 こんな安いタオルで拭くなんて!

母の声がその場に響く

少年の頬には
塩辛い雫が流れていた

少年だけが気づいていた
この場所が
大きな心の迷路の中であることを
この場所で
自分が迷子になってしまったことを
そしてこの迷路は
時間とともに成長していくことを

それでも
少年は口を開くことなく
うつむいたまま
顔も拭かずに立ちすくんでいた
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