まっしろ/霜天
 
傘の隙間から覗き込んでみると
まだまだ空は真っ白で
そこだけは変わらないでいてくれるから
いつまでも届くような気分になる

辺り一面に響いた雨音を
傘の裏側で受け止めながら
跳ねる地面のその上を
私はそっと飛び越えていく

傘の上にある空は
いつでもどこでも白だけど
私はもう作れない
どんなに絵の具を混ぜようと


ここからはきっと もっと遠く
どうしたって遡れない流れの中を
そっと胸を締め付けるような勢いで
駆けていく思い出のような
そんな届かない白さで


それでも
優しい雨音に叩かれて
傘の隙間を覗いてしまう
追いかけたくなるのはなぜだろう

いつもいつも変わらずに
遠くて深い想いの欠片
届かなくても眺めてしまう
そんな匂いの雨でした
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