ノート(わたる光)/木立 悟
 

わたしを忘れた光が
昇りつづけて朝になった
目を閉じても冷たい指先
さよならを言う光に触れた

さらさらと
さらさらと


雨雲が川のなかを遠去かり
水鳥を連れていってしまった
橋の上ではたくさんの人たちが
消えてゆこうとする午後を見ていた


もうすぐ海が見えるところで
草の舟は沈んでしまった
波の間に立つ翼の木から
独りの鳥が夜を照らした


醜く美しい子が川岸に
呪文のように立っていた
朝のなかで閉じられた手が
どこへも行けない光に触れ ひらかれていった


さらさらと
さらさらと
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